ROICとは?
ROIC(Return on Invested Capital、投下資本利益率)は、企業が投下した資本に対してどれだけの利益を生み出しているかを示す指標です。この指標は、企業の効率性と収益性を評価するために用いられ、投資家や経営者にとって重要な指標となっています。ROICは、以下の式で計算されます:
ここで、税引後営業利益(NOPAT)は、営業利益から税金を差し引いたものであり、投下資本は企業が運用している全ての資本を指します。具体的には、自己資本と有利子負債の合計が投下資本に含まれます。
ROICの重要性
- 東京証券取引所からの要請
経営の基本方針に基づき、経営層が主体となり、資本コストや資本収益性を十分に意識したうえで、持続的な成長の実現に向けた知財・無形資産創出につながる研究開発投資・人的資本への投資や設備投資、事業ポートフォリオの見取締役会が定める直し等の取組みを推進することで、経営資源の適切な配分を実現していくことが期待されています(コーポレート・ガバナンスコード原則5-2参照)。 - 投資家の期待
企業は売上高、利益額などのPL指標を重視する傾向があり、投資家は資本コストやROICなどの効率性指標や事業ポートフォリオを重視する傾向があります。企業が重視する指標(売上、利益、コスト等)と投資家が期待する指標(効率性指標、事業の選択と集中、ROE、FCF、ROIC等)のギャップを埋める必要が生じています。 - 資本コストとの比較
ROICは、企業の資本コスト(WACC:加重平均資本コスト)と比較して評価されます。ROICが資本コストを上回っている場合、企業は投資した資本に対して十分なリターンを得ていると判断され、逆にROICが資本コストを下回っている場合、企業は資本を効率的に運用していないと判断される可能性があります。 - 持続的成長軌道の確保
ROICは、長期的な企業価値の創出においても重要な指標です。企業が持続的に高いROICを維持できる場合、それは経営戦略が成功している証拠となります。投資家やアナリストは、ROICを用いて企業の将来的な成長可能性や持続可能性を評価します。
ROICの計算方法
ROICの計算には、以下のステップを踏みます:
- 税引後営業利益(NOPAT)の計算
税引後営業利益は、営業利益(EBIT)から税金を差し引いたものです。具体的には、次のように計算します:
NOPAT=EBIT×(1−税率) - 投下資本の計算
投下資本は、自己資本と有利子負債の合計で、次のように計算します:
投下資本=自己資本+有利子負債 - ROICの計算
上記の数値を用いて、ROICを次のように計算します:
ROICの改善方法
企業はROICを改善することで、投資家に対して高い収益性を示し、企業価値を向上させることができます。営業利益の向上、資本効率の改善、資本構成の最適化は言うまでもありませんが、そもそもの元手(投下資本、営業利益、ROIC)を事業別に把握し、元手にかかるコスト(資本コスト)を分析して、その差額を向上させる努力が必要です。
想定されるROICの導入事例
一般的に以下のようなステップで導入をすることが想定されます。
- 現状把握、事業の理解
画一的な事業分析でなく、企業の実態に合った事業分析を行います。 - 資本効率性指標の分析
可能な限り事業別に細分化して資本効率性指標の分析を行います。 - ROIC導入に向けたインサイトの整理
指標の比較分析を行いROIC導入に向けたインサイトの整理を行います。